島のお盆(迎え) 西古見 

2013年08月29日 | 関連する集落:西古見
先祖をつねに敬うシマの暮らしのなかで、
家族の行事として
もっとも大切にされているものといえば旧暦のお盆。

旧暦7月7日の七夕から、お盆へとつながっています。

ご先祖さまに目印となるように高く高く七夕飾りを立て、
お墓を掃除したりして、お盆のお迎えの準備。
あの世から戻ってくるのに、7日間かかると言われています。



今年の島のお盆は、旧暦7月13日~15日にあたる、
8月19日~21日。

お盆初日、お墓へ行ってこの世に戻ってきたご先祖をお迎えに。
2日目、3日目と、ずっとごちそうなどでもてなし、
3日目の夕方から夜にかけて、
お墓まで見送りに行くという島のお盆。


昨年は、瀬戸内町の蘇刈(そかる)で初日の迎え盆を見せていただきましたが、
今年は、西古見(にしこみ)を訪れました。




瀬戸内町の中心部・古仁屋から西へ、
車で約1時間ほど行ったところにある西古見。

海からは三連立神が集落を見守り、
美しいサンゴの石垣が続く静かな集落。




午前11時ごろ墓地を訪れると、
ご先祖さまを迎えに来ているかたが、ぞくぞくといらっしゃってました。

墓を掃除し、花を生けて、線香をたてて。
白砂を新しく敷き詰めるかたも。




西古見の墓地は、集落の西側にあり、
ほとんどのお墓が海を眺めるよう、
とても景色のいい場所にあります。

ほかの奄美の集落にあるお墓も、海を眺められるいい場所にあることが多く
こんなロケーションのお墓にいつかは入りたいなぁと思います。





お迎えのなかには西古見出身で名瀬在住のかたの姿も。
車で往復約3時間!

この遠い道のりをご先祖のお迎えに来ることでも、
ご先祖さまを大切にしていることがよく分かります。



お花には、ショウロウ(和名:メドハギ)がかかせません。
茎がしっかりしているので、
葉っぱを落として、料理と一緒にショウロウ箸としても出されます。


お迎えは、七夕飾りを倒してから出かけるそう。
使った竹竿は、送りの日に提灯立てに使ったり、
花を活けたり、線香立てにしたとか。


また西古見では、
「おともをして家につれて来るときには、
後を見たら、精霊ガナシ(先祖)が逃げてしまうので見てはいけない。
より道をしてもいけない」との言い伝えもあります。


 *  *


その後、どのようにお迎えしているかを見せていただくために
大正5年生まれの濱崎さんのお宅を訪ねました。




濱崎さんは、祖母から「迎えは早く(行き)、送りはゆっくり」と教えられていたそう。

位牌を仏壇から下ろして、
先祖を迎える「イフェダナ(位牌棚)」または「ムケェダナ(迎え棚)」と呼ばれる場所を準備。
ごちそうや果物、お菓子などでもてなします。





私たちがうかがった時は、お迎えしたあと。
位牌の前には、お茶とお菓子が供えられていました。
お菓子は、りゅうび餅と型菓子

左の花瓶にはショウロウのみ、右は菊と百合。 
以前は、提灯もいっぱい並べていたそうですが、
出し入れが大変なため、一つだけ。


 * *


お盆のしきたりもシマや家々によってもちろん違いますが、
位牌を出した仏壇は、お盆の3日のあいだ扉を閉じ、
仏壇とは別の部屋に位牌棚を作ったり。

仏壇(あの世)から、位牌棚(この世)へとご先祖さまをきっちりといざない、
この世を楽しんでくださいとの気持ちですね。


 * *


濱崎さんのお宅では、
毎年、だいたい以下のような
もてなしの料理をしているそうです。


< 13日 迎え盆 > 

午前 : 10時ごろお墓で迎え、お茶とお菓子を供え
夕  : 白ご飯、おかず(海老、椎茸、枝豆、花型の人参、オクラなどのゼリー寄せ、かき揚げ天ぷら、豆腐と野菜の煮物、そうめん)


< 14日 中日 >
朝 : 白ご飯、豆腐の味噌汁、漬物、目玉焼きなど
昼 : そうめん(肉や椎茸をのせる)
夕 : 小豆のご飯、おかず(お煮しめなど)


< 15日 送り盆 >
朝 : 14日と同じ
昼 : ぜんざい
夕 : 午後の早めの時間に夕ごはんになるものを出す。赤飯、味噌汁、野菜の煮物や肉など。
送りのお祝い : 盛皿にごちそうを並べる



これだけ準備するのに、
どれだけの手間暇がかかるのでしょう!
 
本当に、島のお盆の準備は、。 
ご先祖への思いがないとできませんね。

     
 * *

 
家紋の入った提灯をお持ちでした。
いつもは縁側に吊るしているそう。
今年は吊るすのも難儀だからと出してなかったのですが、
われわれがお手伝いして縁側に。

濱崎さんのところでは、提灯は迎えには使わず、送りの時だけ使用。



「昔からのしきたりはしないとね」と、
8人のご先祖を迎えている濱崎さん。

おひとりで準備されているので、
体力的に大変な部分も年々増えているそう。

ですが、
きっと、ご先祖さまも喜んで
「迎え盆」に、この世にいらっしゃったことと思います。




このあと「送り盆」の日も、
濱崎さんのお宅を訪ねてお話をうかがいました。





< 参考文献 >
・「瀬戸内町誌 民俗編」 瀬戸内町
・「瀬戸内町の文化財をたずねて」 瀬戸内町教育委員会
・「奄美の暮しと儀礼」 田畑 千秋 





2013.08.19  瀬戸内町 西古見

奄美.asia / Y.K