瀬戸内町の須手在住で、お墓は加計呂麻島の西阿室にあるお宅の旧盆。
今までのはこちら。
「旧盆 その1 お迎え」 http://higyajiman.amamin.jp/e268361.html
「旧盆 その2 お供え」 http://higyajiman.amamin.jp/e267414.html
最終回となる、旧暦7月15日(新暦9月1日)の「送り盆」のお話です。
* *
旧盆のお供えが全て終わった後、少し休憩し、
15時半よりフネオクリが行われました。
フネオクリをするのは、
古仁屋に住み、墓が対岸の加計呂麻島にある家が、
最終日に墓までご先祖さまを送れないので、代わりに舟で送るためです。
フネオクリが行われる頃には、
お供え物の食材系はほとんど使ってなくなっており、
残っているのは果物や型菓子ぐらいです。
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さてフネオクリです。
お迎えの時同様、そこにいる人全員が一人づつ線香を上げます。
線香をあげ終わると、フネオクリの準備です。
ここで使う舟は、旧盆初日の前日に準備されました。
今年は発泡スチロール製ですが、以前はちゃんと木の板で作っていたとのこと。
発泡に変わった理由として、板だとすぐに小さな波で沈没してしまうのと、
あまりお供え物を乗せることができないからだそうです。
さらにフネオクリに使うムジ(里芋?)ですが、お盆用に庭に植えてあります。
送り日の昼に適度なサイズのムジをとりました。
ムジの茎を刻んで米と一緒にまぜ、ムジの葉の上にのせて舟に乗せます。
ムジを採取しているところ
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ムジの葉
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さらに供え物を家族で相談しながら、バランスを見てどんどん載せていきます。
今回乗せたのは、型菓子、ショウロウバシ、ムジ茎入白米、白餅、じょうひ餅、お菓子、線香。
じょうひ餅は線香を刺す台にも使われていました。
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お盆中、すべてのお供え料理に付けられていたショウロウバシですが、ここでも必要です。
箸がないとごちそうを送ったのに先祖が食べられなくなるからです。
この話を聞くと、フネオクリのお供えは、先祖があの世に帰るまでのお弁当のようなものでしょうか。
さて、舟が準備できると、次は海までみんなで見送りです。
まず先頭に子供を歩かせ、提灯をもたせました。
提灯が先頭で、他のメンバーはそれより先に出たらダメとのこと。
須手の港までみんなで歩き、「また来年ねー」と言いながら舟を流しました。
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最後にタバコに火をつけていれました。
亡くなられたおじいさんが好きだったそうです。
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舟が加計呂麻島へと向かって行ってます。
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フネオクリをした後、家に入る前にお祓いをします。
お祓いの方法として、シキミズ(敷水)を使います。
この家ではもともとしていませんでしたが、
親戚のユタ神様がしないとだめということではじめ、いまでは毎年しています。
シキミズの作り方は、まずなんでもいいので入れ物(深めの皿など)に米をいれ、水を敷きます。
そこに塩を入れ、最後にお湯をいれて完成です。
これを玄関先におき、送った人が帰ってきたら、
家に入る前に、米をかじるか頭の上に載せなければなりません。
また、その水を手で少しとり、体や肩をはらって完了です。
これで先祖に対する流れはすべておしまいです。
最後に現世の生きている人のために、ショウジンオトシがおこなわれます。
これはお盆の行事が全て終わったあと、
あの世向けの料理ではなく、いつもの現世の料理に戻すという意味合いがあるようです。
記録した家では、ショウジンオトシには刺身を最低でも一切たべるということでした。
刺身以外にも、卵、鶏の唐揚、魚のから揚げなど普段食べているものが出されました。
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嘉鉄集落で聞いた話だと、
ショウジンオトシでヒムン(干し魚)を使うという家もいらっしゃるようです。
これで旧盆の流れはすべてとなります。
この後はもちろんそのまま親戚一同の飲み会でした。
結婚して新しく親戚になった人たちも一緒に参加しています。
この飲み会は、親戚のつながりを残していくために大事ですね。
先祖と現世をつなぎ、さらに現世同士の関係もつなげるいい行事ですね。
飲み会は最近の話や都会に行ってる子供の話、
昔話で夜中まで盛り上がっていました。
今回記録した旧盆ですが、別の人に話を聞くといろいろと違いがあります。
集落毎だけではなく、各家庭でも違うようです。
今回のは瀬戸内における現在の盆の一例としてご紹介させていただきました。
またうちはこんな感じでやってるよとか、
「写真撮りましたよ」とかあればぜひ教えてください!
以上 現場監督 水野でした。
2012.08.30~9.01(旧暦7月13日~15日)
瀬戸内町 須手
S.B.I (瀬戸内町 文化遺産 活用実行委員会)
鹿児島県 奄美大島 瀬戸内町立図書館・郷土館内