鹿児島県立古仁屋高等学校 家庭クラブ

2014年04月10日 | 関連する集落:古仁屋

第62回鹿児島県高等学校家庭クラブ研究発表大会にて、古仁屋高校家庭クラブが最優秀賞を受賞しました。
このときに研究発表された素晴らしい資料をご覧ください。わがまちのヒギャジマンとしてご紹介いたします。

 



きゅら島 奄美からの贈り物
鹿児島県立古仁屋高等学校 家庭クラブ

Ⅰ題目設定の理由
私たちが住む瀬戸内町は、鹿児島市から約400km南の奄美大島にあります。
鹿児島新港から船で11時間、さらに南へ車で約1時間のところにある、人口約1万人の町です。
古仁屋高校は創立83年の学校で、町内唯一の高校です。
普通科2クラスですが、2年生からは、進学コースと 情報ビジネスコースに分かれ各種検定試験などにも取り組んでいます。
本校は、男子1名、女子6名、計7名の家庭クラブ役員で活動しています。
全校生徒125人と小規模の学校ですが、地域との結びつきがとても強く、
さまざまな行事などにも、古仁屋高校生が積極的に参加し、ボランティア活動にも力を入れており、
地域に愛されている学校です。



しかし、卒業後は進学や就職で島を離れる生徒がほとんどです。
台風の通り道である奄美は、海が時化ると船が欠航するので、外からの食材が入ってきません。
また、1年を通じて暖かく、島でとれる食材を使って、独特の食文化ができたと考えられます。

例えば、サトウキビから作られる 黒糖、きび酢、たんかん・パッション・パパイヤなど
島の野菜や果物、奄美の飲み物「みき」、養殖日本一を誇るクロマグロ、奄美の郷土料理 鶏飯。


 
地域の伝統を受け継いでいくべき私たちは、
食べたことはあってもあまりよく知らず、自分たちでは作れないということに気がつきました。
そこで、私たちは3年前から、そんな奄美の食材について取り組んでいます。

Ⅱ実施計画
1 実態調査
2 研究実践活動
3 まとめと今後の課題

Ⅲ実施状況

1 実態調査
奄美の食材といえばなんといっても「黒糖」です。さまざまな料理やお菓子に使われています。
瀬戸内町は黒マグロの養殖日本一の町として、最近注目されています。
しかし、そのほとんどは首都圏へ出荷され、内臓は多くが捨てられているそうです。

郷土料理といえば、アンケートで鶏飯がダントツの人気でした。
しかも、小中学校の「学校給食」が一番おいしいと 本校生は回答しました。
瀬戸内町の小中学校では、毎月1回「鶏飯の日」があって、子どもたちが楽しみにしているそうです

さらに奄美の飲み物「みき」についての アンケートを全校生徒にとってみました。
みきをのんだことがありますか。という質問に対しては、68%の人が「はい」と答えました。
次に、「みきの原料は何か知っていますか?」という質問に対しては、53%の人が「いいえ」と答えました。
「みきは好きですか?」という質問に対しては、48%の人が「嫌い」と答えました。
みきを飲む人」を聞いたところ、祖父母の世代は、みきを好んで飲みますが、若い人ほど苦手意識を持っていることがわかりました。
これらの実態調査をもとに実践活動を行いました。

2 研究実践活動
 

(1)黒糖



まずは、黒糖について取り組むことにしました。
町内にある「奄美ヘルシーネットワーク」で黒糖作り体験をさせて頂きました。
社長の昌谷さんによると、町内の製糖工場は、昭和30年代には97カ 所もあったそうですが、現在は6カ所しかないそうです。

黒糖作りは冬がシーズンなので、夏にお願いした私たちのために、
冷凍したサトウキビの絞り汁をつかい、枯れた松の木で、炊いて作りました。
固まる前の黒糖水飴、混ぜ方のタイミング、出来たての黒糖の味など、奄美にいながら知らないことをたくさん学ぶことができました。
 
黒糖を使って伝統のお菓子を作ってみました。



黒糖かりんとう、あんだーぎ、よもぎの葉をとりに行って、ふてぃむちも作りました。
ふてぃむちは、本来は蒸すのですが、もっとおいしくできないかと試行錯誤した結果、
焼いてみると風味が増し、香ばしくみんなに好評でした。


(2)クロマグロ

クロマグロの内臓を使った料理ができないかと考えました。

 
マグロの内臓など、見たことも食べたこともなかったので、苦労しました。

胃袋は、臭みもあり加熱すると固くなります。
何度も試した結果、しょうがを加えて、圧力なべで15分ぐらい加熱すると柔らかくなることがわかりました。

この、胃袋を使って焼きそば、ハンバーグ、ぎょうざ、きびす南蛮などにしてみました。
少し歯ごたえがありますが、臭みはあまり感じられませんでした。とくに、かりっと揚げたきびす南蛮が好評でした。

瀬戸内町食の祭典への出店を依頼され、
カレーの中にゆで汁と胃袋を肉の代わりにいれた「古高マグロカレー」を作りました。

奄美大島をイメージして盛りつけにもこだわったところ、準備した100食があっという間に売れてしまいました。



 (3)鶏飯

小中学校の鶏飯が1番おいしいというアンケートを受けて、
瀬戸内町の給食センターにお邪魔しました。
この給食センターでは、加計呂麻島、請島、与路島を含む25校に毎日給食を届けるのだそうです。
 


栄養教諭の坂中先生にお話を伺いました。
給食に対する思いや注意点を教えて頂きました。そして「鶏飯」の作り方も特別に教えて頂きました。
  具材は7種類。パパイヤの漬け物は高いけれど、どうしても外せないそうです。

ポイントとしては食中毒防止の為、すべての具材を90℃で炒める。
だしは、鶏ガラだけでなく、ぶつ切りも使う。おかずだけで160円でつくらなくてはいけない。
なるべく、地元のものを使うように、現在も常に開拓している、ということでした。

私たちの活動に、とても興味をもってくださり、地元の古仁屋高校にとても期待していると話されました。
学校に帰って、まずは、自分たちの手で、最高の鶏飯を作ってみることにしました。
鶏ガラと豚骨でだしをとり、味付けも、塩味、醤油味、味噌味にしてみました。
パパイヤの漬け物もつくりました。この歯ごたえは、パパイヤでしか出せず、鶏飯には欠かせません。



 具材をそろえて鶏飯をつくりました。
塩と醤油での味付けが1番おいしく、鶏ガラだけよりも豚骨が入るとうまみが増しました。

私達は、このだしでご飯を炊いて、具材をのせ「炊き込み鶏飯」も作ってみました。
具材を一緒に炊いてみると味に変化がなく、飽きてしまいましたが、
後でのせると いろんな味が楽しめて、冷めてもおいしかったです。
 


(4)たんかん

毎年、2月になると八百屋の店先に、5kgの袋詰めで たんかんが並びます。
糖度計ではかってみると、14度もありました。

奄美のたんかんは、皮が少 し厚いので傷みにくく、ほどよい酸味もあって絶品です。
小さめのものは、1000円以下で買えるので、ジャムをつくることにしました。

まず、皮と果汁を搾って、マーマレードをつくりました。
思ったより、苦みが強かったので、今度は、実だけミキサーにかけ、島ザラメを40%加え、煮てみました。

すると、「極上たんかんペースト」ができあがりました。
あまりにもおいしく、口当たりもなめらかで、
そのままソースとしてホットケーキなどにかけても、ヨーグルトにかけても絶品でした。

旬はほんの1ヶ月ぐらいの貴重な食材なので、いつでも使えるように、袋につめ、冷凍もしました。


 
 
せっかくなので、たんかんペーストを使ったスイーツを作ってみました。



蒸しケーキ、たんかんプリン、パウンドケーキです。

特に、たんかんパウンドケーキが好評でした。
前回作ったちょっと苦めのマーマレードも、細かく切っていれると、たんかんの風味とほろ苦さが加わり、さらにおいしかったです。
しかし、蒸しケーキにすると、苦みが感じられることもわかり、たんかんは、蒸しケーキには向かないことが、分かりました。

 

 
(5)みき


 
先日おじゃました、給食センターで、ぜひ給食のメニューとして「みき」を使ったデザートを考えてほしいと依頼を受けました。
みきとは、奄美の伝統的な飲み物で、夏バテ防止に昔から飲まれているそうです。
お米が主な原料で、甘酒に似た風味があります。昔は各家庭で作られていて、酸っぱくなったものを好む人もいますが、
最近は若い人があまり飲まなくなっているそうです。 みきとは、天然の素材からできた栄養ドリンクなのです。

私達は、町内で唯一みきを製造している「竹山食品」にみきについて聞きに行きました。
社長の竹山さんが工場を案内して下さいました。

ここでは、一日に約300本製造しているそうですが、高齢者施設などを中心に注文があり、完売するそうです。
栄養価が高いけれど、若者に敬遠されがちなみきをなんとか、デザートに使えないか、と私たちは考えました。

そこで、若者に人気のある、ババロアやパウンドケーキに入れてみました。
みきを加えると、砂糖が少なくてすみ、生地がしっとりと焼き上がりました。
私たちが作った、たんかんペースト入りも作り、これは「ぜひ販売したい」と思う完成度でした。
しかし、給食センターでは、蒸し器しか使えないので、再び、挑戦しました。

薄力粉、卵、サラダ油、ベーキングパウダーに

①黒糖とみき
②砂糖とみき(あんこを入り)
③砂糖とみきに(たんかんカスタード入り)
④みきのみ  
 ⑤みきとたんかんペースト

を加えたものをつくってみたところ、黒糖とみきの組み合わせが、給食センターでも大量に作れて、
おいしく、コストも抑えられるという結果になりました。

もう少し、改良を加えて、給食センターに新メニューとして提案するつもりです。
 


Ⅲまとめと今後の課題

この3年間、私たちは、奄美の様々な食材と向かい合ってきました。
気がつけば、かなり食材に詳しくなり、次は何をしようかと考えるようになりました。
取り組む中で、失敗も沢山しましたが、そのたびに新しいアイデアが出てきて、だんだん楽しくなってきました。

私たちが住む、奄美大島には、独特の食材が沢山あり、
それらに向かい合い1つ1つ挑戦していくことは、
地域のよさや歴史を知ることも繋がり、本当にやりがいのあることだと思いました。

また、地域の方は、どんな事でも快く教えてくださり、この町の人の繋がりと暖かさ に改めて誇りを感じました。
そして、古仁屋高校に対する大きな期待も感じました。
瀬戸内町で毎月行われる、朝市にも出店して行きたいです。

きゅら島とは、美しい島のこと。

自然からたくさんの贈り物をいただき、それに感謝し、将来子どもたちに伝えて行きたいです。

私たちの挑戦は、これからも続きます。